雑貨を扱うショップあれこれ –「 雑貨力」読者専用ページ其の3/全文公開

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ギフト、セレクト、ライフスタイル、バラエティーショップ。雑貨も扱う小売店の解説

2019年8月20日全文公開(パスワード保護解除)

流行を取り入れた雑貨、趣味性を持つ雑貨商品*を扱っている小売店は「雑貨ショップ」「雑貨屋」と呼ばれる小売店だけではない。
* 例えば本誌で取りあげられるような商品群のこと。ライフスタイルショップ、セレクトショップ、ファンシーショップ、バラエティショップ……。

これら比較的新しい名称(業態)の小売店で雑貨商品が、扱われていることも多い。
あるハイセンスなライフスタイルショップで展開されている商品と同じ物が気軽なバラエティショップで扱われていることもあるし、その逆の場合もある。

雑貨も扱う小売店の最近の名称と業態はまさに千差万別、百花繚乱。今回はそれら業態の特徴と今後のあり方を考えてみたい。筆者がまとめた定義と解説

 

さまざまな店舗で扱われる雑貨商品

ライフスタイルショップとは

生活様式(ライフスタイル)の提案をテーマに掲げているショップ。ターゲット(想定したお客様層)をある程度絞り、統一感のあるイメージやテイストでの商品展開が身上。
インテリア(室内)商品である家具類、ファブリック(カーテン等)、インテリア雑貨を中心に扱うショップを指す場合が多いが、加えて「住=家、庭の新しい環境」「衣=ファッション」「食=グルメ、クッキング」「職・学=職場、学校でのこだわりアイテム」「余暇=ホビー、レジャー、行事やイベントの演出」などの、生活全般にわたるスタイル提案を行うショップも増えている。

店頭でライフスタイルを提案するためには、食器、キッチン雑貨、バストイレタリー用品はもちろん、ファッション関連、ステイショナリーなどが欠かせない。
最近では、本来カルチャー、エンターティメント分野の商品であるはずの音楽CD、書籍、スポーツ用品。子供、ペット用品。デザインにこだわった電化製品も多くのショップの展開アイテムだ。

明確なターゲット設定、イメージの統一感を保つ事ができるのであれば、どんな分野の商品であっても、貪欲に取り入れられる業態。物販業だけに留まらず飲食業(カフェ、レストラン等)も展開の想定範囲。極論だが将来、ホテル業、不動産業、教育業などまさに生活=人生の全てのスタイルを提案するビジネスに広がる可能性を持つ業態とも言えるだろう。
例:無印良品アフタヌーンティーフランフランイデー、リヴァンス、シボネ、ボザール、ZARAHOME(スペイン、日本展開予定)他

ホームファッションショップ(ストア)とは

文字通り、家や部屋に対しての装飾(ホームファッション)関連商品を中心に扱うショップと定義したい。昨年日本進出1号店がオープンした話題のIKEAもこう呼ばれる事が多い。インテリアも洋服感覚で着替え、ファッショナブルにコーディネートするというコンセプトのもと、家具類、カーテン、ラグマット、ベットまわりのファブリック商品、内装関連商品などが中心商材だ。インテリア雑貨、ガーデン雑貨、ペット用品、キッチン用品、生活雑貨、電化製品などを扱う事も多い。

前述のライフスタイルショップと同義で使われる場合も多いが、こちらの方が品揃えのバリエーション(奥行き)やボリュームをセールスポイントとする傾向にある。ライフ(生活全般)という表現で、ともすれば取り留めなくなりがちなライフスタイルショップに比べて、ホーム(家、部屋)と表現し、場をある程度限定しているため取扱商品分野(範囲)は明確である。

セレクトショップとは

商品の選択(仕入れ:セレクト)という、店の運営視点からのネーミング。ファッション店で、近年、よく用いられている名称であるが、ファッション以外の商品を中心に扱うショップに使用されることも増えてきた。

ファッション店で一つのメーカーやブランドの商品ライン(群)を中心に扱うショップに対して、たくさんのメーカー、ブランドの幅広い選択肢から小売店が独自のコンセプトで「セレクト」して仕入れているショップを呼んでいたことがはじまり。*ビームスユナイテッドアローズ

メーカーやブランド主導のMD(品揃え計画)ではなく、小売店側(バイヤー、オーナー)が、独自で一から構築するMDが特徴である。こちらも前述のライフスタイルショップと同義で使われる場合もあり、なかなか区別がつきにくいのが実状だ。あえて、違いを挙げるならば、前述の2業態に比較して店舗面積が小さい傾向にあること。

そして、セレクトしているバイヤー本人や店自体の知名度(実績他)をアピールポイントにしていることが多い。カリスマ的な人気のデザイナー、文化人などを起用して(経営者である場合、イメージのみの利用の場合もあり)の展開も目立つ。逆説的ではあるが、他の名称を使いづらいショップ。オーナーが「好きな物」を気ままに仕入れている小規模ショップなどを表現する際に使用される場合もままある。

例:ゆとりの空間(栗原はるみ)、コンランシショップ(テレンスコンラン)、ポール・スミススペース (ポール・スミス)、マーサエブリディ(マーサ・スチュワート、04年閉店)他

ギフトショップとは

消費者のギフト(プレゼント、贈答)という習慣をテーマとしたショップ。フォーマルギフト(中元歳暮、慶弔関連、各種お祝い)などのしきたりによるギフトを中心としている。最近では比較的カジュアルなギフト(友人間の各種お祝いなど)にも力を入れており、雑貨商品は不可欠だ。シャディハリカなど

ファンシーショップとは

主にローティーンの女の子を対象としたファンシーグッズを扱う小売店。ファンシーグッズとは、キャラクターや動物、花などをモチーフにしたデザインのステイショナリー、玩具、ファッション雑貨、インテリア小物などを指す。

業態名として、一般的にも広く認可されており、女性向けの雑貨を扱う小売店と言うとファンシーショップをイメージする人は多い。キャラクター商品を中心に扱うショップはキャラクターショップと呼ばれることも。

バラエティショップとは

中-低価格帯の様々な分野の商品を扱う。服飾、趣味雑貨、ステイショナリー、玩具、美容関連商品などが中心。小型の家具、電化製品、賞味期限の長い食料品(菓子、紅茶他)などを扱うこともある。ファンシーショップ、雑貨店と同義で使われる事も多い。

どんな業態にも「雑貨」が欠かせない

これら各業態の名称は、各企業の「自己申告、表現」と「他者認知」の結果による。もちろん、店の業態名を使用するにあたって公の認定や許可も必要ない。どれも大変緩やかであいまいな定義である。中には誰にとっても「雑貨ショップ、雑貨屋」としか見えないショップにもかかわらず、これらの名称(特にライフスタイルショップ、セレクトショップ)を標榜するショップもある。

既存にないまったく新しい独自の業態のため、そうとしか説明できないという場合もあるだろうし、「雑貨屋、雑貨ショップ」という言葉が持つ、気楽なイメージが企業価値を損なうと考えた末の表現という場合もあるだろう。だが、どんな名称を使用しても良いが、お客様をはじめとする他者からの納得と認知が必要なのは言うまでもないことだ。

そして、どの業態にも「雑貨」が品揃えに欠かせないと言うことにも注目したい。こんなに様々な業態で引っ張りだこの商品分野は他にないだろう。ターゲットの絞り込み、テイストやイメージの統一性とコーディネート提案、様々な取引先からの縦横無尽なセレクト仕入れ。お客様のライフスタイルや習慣、行事に着目する姿勢は、「雑貨屋、雑貨かショップ」が以前から行っているものでもある。*各例店、企業は筆者の独自な基準。

富本雅人

月刊パーソナルギフト07年12月号掲載