コロナ禍において、インバウンド客が消えたが、今後収束に向かって国際的な観光の復活が望まれるだろう。2020年8月23日
5年後を占うかのような内容。ほぼ的中しているが、予想以上にインバウンド現象は大きくなった。2020年1月15日
本投稿は、2015年執筆内容です。
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観光地だけでなくいろんなエリアで目立つ外国人客
昨年(2014年)11月号(本連載80回)でも取りあげたが、東京オリンピック開催の2020年に向け、ますます増加するであろう、訪日外国人客(以下訪日客)への対応を2回にわたってさらに詳しく考えたい。
今号では、訪日客の消費動向と2014年10月1日に改正された「免税販売制度」の概要について。
訪日観光客の数と目的。急増のわけ
「ビジット・ジャパン・キャンペーン」や「クールジャパン」政策、そしてアベノミクス効果の円安の影響もあり、日本を訪れる海外の旅行客は増加の一途だ。2014年は1,300万人(12,177,500人:2014 年11月末までの累計12月17日発表/日本政府観光局=JNTO)を達成することがほぼ確実である。ちなみに10年前の2004年の訪日外国人客数は613万人であり、この10年で倍以上となった。
国は、訪日客数を2030年までに3,000万人にするという目標を掲げている(日本再興戦略)。これは大都市や有名観光地だけでなく地方への訪日客の集客にも、大いに注力するという計画。結果的に全国の地方都市の小売店をはじめとする多くの業種で、訪日客対応を望まれるようになるだろう。
2020年訪日外国人旅行者数4000万人、訪日外国人旅行消費額8兆円等の目標出典(日本政府観光客)
国別の訪日客数。どこの国から?
2023年の1月から11月までのデータ累計では訪日客数の国・地域別のベスト10は、台湾(2,617,700人)、韓国(2,484,400人)、中国(2,219,300人)、香港(819,600人)、米国(818,100)、タイ(581,300人)、豪州(265,100人)、マレーシア(210,200人)、英国(203,200人)、シンガポール(180,100人)。*10位までの合計9,985,600人。
この上位10位中のアジアの7カ国・エリアからの訪日客の合計は約880万人と訪日客全体の7割を占める。このアジア圏の訪日客にどう対応していくか、直近の戦略づくりが重要だ。
訪日客の目的は、約62.2%が観光。23.9%が業務(訪日外国人の消費動向/平成26年7-9月期報告書観光庁以下消費動向)。
業務とは展示会・見本市や国際会議参加、社内会議や研修、商談等を指すが、業務目的の訪日であっても、併せて観光や買い物も行うことがほとんどだろう。
訪日観光客の買い物の現状。雑貨店で利用も
訪日外国人が利用している小売店は、スーパーやショッピングセンターが65.8%。 56.8%がコンビニ、56.7%が空港免税店、53.2%が百貨店(複数回答)。
ワンストップで買い物が可能なショッピングセンターや百貨店。日々の買い物に便利なコンビニ。旅行者が必ず利用し、免税購入できる空港の店舗。訪れた観光地の土産物店などが上位なのは当然だろう。
注目して欲しいのは、ファッション専門店や100円ショップ、アウトレットモールなどの利用者も現状で20-30%とかなりの割合で存在するということ。グラフには明示されてないが、ドラッグストアやディスカウントストアが多くの外国人観光客で賑わっている事はご存知だろう。
いわゆる「外国人観光客向けの店」だけでなく、これら日本人が普段の買い物をするような店舗での利用が増加しそうだ。今後、雑貨店、インテリア、工芸、ギフト専門店、バラエティショップ、コレクターズ商品を販売する店など、より専門性、趣味性の高い店の利用につながっていくと予想される。
ちなみに、筆者の事務所は東京の下北沢にあるが、ここ1,2年で外国人買い物客数が格段に増えたこと、外国人買い物客が町に詳しくなったことを実感している。
元来下北沢は東京でも有数のショッピングエリアではあるが、路地裏の個人店やマニアックなファッション店を巡るような、“通”な外国人買い物客が目立つようになったのは、最近のことである
訪日客の国別の買い物のランキング
多くの国で好まれるのは、お菓子・食料品や化粧品・医薬品の消耗品。洋服やバックなどのファッション商品の人気も高い。上記データには明示されてないが、キャラクター商品、玩具、文具や雑貨類に関してもかなりの購入が推測される。日本人が海外旅行で、お土産として購入する分野と同様だ。
本資料は、免税販売制度が改正される14年10月以前のものであり、ほぼ全ての商品が消費税免税販売対象となった2015年現在、さらに雑貨商品が人気を集めそうだ。
コラム:免税販売とは
輸出物品販売場(免税店)の経営者が、外国人旅行者等に対して特定の物品を一定の方法で販売する場合に、消費税が免除される制度のこと。販売対象者:「非居住者」:旅行者等が自分で使用する場合。日本国内で勤務している者、日本に入国して6ヶ月以上経過している者は含まれない。旅行者であっても販売用や業務用の購入は含まれない。
対象商品:14年10月1日より、従来の対象である一般物品(家電、装飾品、衣料品、かばん)に加え、消耗品(食料品、飲料品、薬品類、化粧品類他)も対象に。これによってほぼ全ての商品が免税販売の対象となった。雑貨やおもちゃ、文具、インテリア商品など、読者の皆様の販売されている全ての商品も対象である。
免税店の許可:免税販売をはじめるにあたっては所轄の税務署から許可を得る。許可にあたっての詳細は税務署まで問い合わせ。
販売時の注意点:免税店は、国内での横流し等の不正を防止するため、以下の事項をすべて満たす場合らみ免税販売を行うことができる。*改正によって書類の記載方法や包装形態に関して大幅に「弾力化」された。1.1人の旅行者に対して、同一店で1日の消耗品の販売合計額が5千円を超え50万円までの範囲内のもの。*一般物品の場合は1万円を超えること。
2.旅行者から旅券等の提示を受け、旅券等に購入記録票を貼り付け、旅券等と購入記録票との間に割印すること。*出国するまで使用させないため。
3.消耗品を免税購入する非居住者から、購入後30日以内に輸出する旨の購入者誓約書(署名が必要)を提出してもらうこと(7年間の保存義務)。*国内で使用させないため。*一般物品は「30日以内」の定めはない。
4.指定された方法により包装を行うこと。
5.「一般物品」について特殊包装を行った場合は「消耗品」の規定が適用され、合計金額が5千円以上となる場合も免税販売の対象とすることが可能です(平成30年7月1日より)。https://www.mlit.go.jp/kankocho/tax-free/about.html
免税店舗数。100店に1店が免税店 → 20店に1店が免税店
愚問だが同じ商品の買う際、消費税を支払わなくてもいい店と支払わなければならない店。人はどちらで買い物をするか。もちろん、全ての人が消費税のいらない店を選ぶだろう。
手続にかかる時間や手間を差し引いても、多くの旅行者が免税のメリットを享受し安く買い物したいはず。現在8%の消費税が10%になれば、さらにその傾向が強くなる。たくさんの買い物をする予定の人であればあるほど、免税店での買い物を好むことに。
免税販売の為の人手(教育)や設備の用意、手続の手間など越えなければならないハードルは少なくない(改正前に比較すると格段に“弾力化”されているが)が、店によっては免税販売は協力な武器となり得そうだ。
実際、銀座の有名百貨店では、免税販売が売上の10%を占めるという。また有名ディスカウントストアも改正前に3%程度だった免税販売の売上を2020年には10%に伸ばす予定。また、ロフトやハンズ、プラザなどの雑貨店チェーンもエリアによっては、免税販売を既に開始していることが証拠だろう。
日本の免税店数は、2015年10月1日の時点で9,361店。4月の調査時の5,777店から3,584店が新たに免税店となった。国が掲げていた、2020年までに1万店という目標は2014年中にゆうに達成の見込みである。この改正を大きなビジネスチャンスと目論む企業が多いということだ。下記引用注意
2019年4月1日時点の免税店数
全国で50,198店となり、2018年10月1日(前回調査)からの半年間で5.8%増の2,757店の増加となった。また、2018年4月1日からの1年間では、12.4%増の5,552店の増加となった。出典 観光庁 https://www.mlit.go.jp/kankocho/page02_000116.html
日本の小売事業所は990,246店(平成28年度総務省統計局)上記50,198店の免税店の割合は、約20店に約1店が免税店ということだ。
平成19年の商業統計によると日本の小売店は113万店。近年、小売店が減少傾向のため、例えば現在100万店程度と推測すると、実質100店中の1店舗が免税店と言うことに。商店街の中に1、2店以上は免税店というイメージだ。
おもてなしとしての免税販売
「外国人客が来るような有名観光地でない」、「売っている商品も関係ない」「許可が得にくそう」、「手続きが面倒くさそう」……etc。実際に中小の雑貨小売店から聞かれた声だ。
しかし、日本国内の地方都市を訪れる訪日客を増やす国の政策があり、今回の改正によって全ての物品が免税対象となった今、免税販売を検討する価値は充分あるだろう。免税販売はお客様に対しての“おもてなし”である。
免税販売許可手続や販売時の手間などのデメリットと、免税販売での売上拡大のメリットを天秤にかけ、充分に検討することは、小売店経営者の重要課題だ。
また、免税販売を行わなくとも、外国人客対応の心づもりは、すべての小売店のこれからの必須事項。
次号では外国人客に向けた接客・販売促進、品揃え他に関して取りあげる。
富本雅人 月刊パーソナルギフト2009年9月号掲載